前夜の戦闘で疲れ切っていたが、外がうるさくて寝付けない。
阿呆な合宿生が、病院で肝試しをして騒いでいるのだ。
夏はこれが2カ月弱も続くため、本当、大迷惑だ。
普段なら、事実確認をし警察に通報するところだが(明らかな不法侵入罪のため)、今夜はそれすら面倒だ。
日付が変わり少し経った頃、外で騒いでいるバカ共とは違う叫び声が家の中から聞こえたような気がしたが、丁度、寝付いたころだったので気にしないでいた。
バタバタ、ドタドタと凄い足音が聞こえ、ボクが寝ている部屋の引き戸が勢いよく開かれた。
「クモが出た。」
そりゃ、いつも家蜘蛛なら沢山見かけるから夜中でも出るでしょ。
まだ覚醒しきらいない頭でボクは考えていた。
「今朝、話していた大きいやつ!」
はぁ…
今夜も戦闘だ。
ボクは布団からはいずり出ると、出現現場へと向かった。
現場へ着き確認すると、愛犬がずっと天井を眺めている。
後から妻がゴ●ジェットとク●ックルワイパーの柄を渡してきたので、武装は完了。
敵は、昨夜のやつより一回りは小さいが、確実に15cmは超えている。
ボクは愛犬を退避させ、一吹き。
確実に捉え、天井から落下。
家具の隙間へと逃げ込まれた。
こちらも負けじと家具を移動させ、敵の姿を確認する。
すると敵は高速移動を開始し、テレビの裏へと逃げ込む。
しかしテレビの上から丸見えのため、ここで一吹き。
確実に捉え、敵のHPを削る。
そんな一進一退の攻防を続けているうちに、愛犬が近づいてきていた。
こうなるとまずい。
噴射ができない。
それを良いことに敵は得意の高速移動を開始。
今度はそれを愛犬が追う。
ボクは、愛犬に邪魔されてしまい足止めを食らってしまう。
ここで構図が変わり、愛犬対蜘蛛になる。
お互い、にらみ合いから動かない。
愛犬は、初めて見る大きな蜘蛛に興味津々で食べる気満々!
仕方がないので、蜘蛛から遠い場所で硬直していた妻に愛犬を託し、再び戦闘へと舞い戻る。
愛犬が近くにいるため、噴射はできない。
仕方がないので、左腕に装備したク●ックルワイパーで戦うことにした。
丁度、カーテンンに張り付いていた敵を一刀両断する勢いで、左腕を振り下ろす。
ヒット!
脚を1本切り落とした。
敵は再度、高速移動し廊下へと出た。
障害物がなくなり、戦いやすくなったボクは仕留めに入る。
左腕を高速で振り下ろし、敵の機動力を奪う。
それは確実にヒットを続け、1本、また1本と脚が取れていく。
機動力を次第に失いながらも、玄関まで逃げてきた敵を昨夜と同じゴミ箱の中に確保。
ボクは、台所へと足をすすめ食器用洗剤を持ってくる。
そして、敵に向かい、「ゴメン」といいながら止めをさした。
敵は体を丸め、動かなくなった。
それを見届けたボクは、どこかでG達が歓喜の舞を踊っているように感じた。
連日にわたり巨大蜘蛛と戦ったボクは、やりきれない気持ちで一杯だった。
それは、見た目が悪いだけで殺されてしまったGの天敵、アシダカグモへの哀悼の意だったのかもしれない。
完